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織姫も空を渡る。 3







「あ、あれ・・・サンジ・・?」

見てはいけないようなものを見てしまったかのような、変なものを見てしまったかのような・・。
戸惑いまじりにルフィが声をかけると、スッと呪縛が解けたようにサンジは急に身体を起こし、顔を覆い隠すように片手でそこに浮かんだ表情を見えなくしてしまった。
そして・・・

「・・って、・・ぇ」
「ん。今・・買ってねぇって、言ったか・・?」
「・・だ。」

何故だか分からないが小声で喋りだしたサンジの口元に耳を寄せ、一字一句逃すまいとルフィは耳に意識を集中させた。今の所、“買ってねぇ”と“そうだ”って言葉は聞き取れた・・・きき、とれ・・・、

「え、えぇえ!?
サ、サンジがあいつ等に土産買って来ねぇとか、在り得ねェ!!」
「・・・・・・。」
「ん?・・今のは聞き取れなかった、なんていったんだ?」

先ほどよりも声量の落ちたボソボソ声に、ルフィは小首を傾げて問いかける。
するとサンジはむくりと顔をあげて、今日は何日だ?と突然尋ね返してきた。

「今日?・・・・・・あー・・っと、・・何日だっけ?」
「・・・7月7日。たなばた、だよ。」
「あぁそうだ!思い出したっ・・・そんで明日の7月8日が、サンジが向こうに行っちまった日で・・・。」
「・・・そっちは、覚えてんのかよ・・。」

ぽつりと呟いたサンジの頬が淡い朱色に染まる。ルフィはその変化に気付いていないようで、それがどうかしたのか?という言葉を表情に貼り付け、眉をぐんと寄せサンジを見返した。
ルフィの全く伝わっていませんとばかりの間抜けな表情に、サンジはくわっと目尻を上げ、急に怒り始めたのだ。

「だから、七夕だっていってんだろ・・・!?」
「いや、それがどうしてナミやロビンに土産買ってこなかったことに繋がるのかって聞いてるんだって!」
「そりゃっ・・・七夕、だからだよ!!!!!」
「わけわかんねーよっ!!」

はっきりと理由をいわないサンジに、ルフィも次第に熱があがっていく。ぐるるるぅ・・と唸り声があがるぐらい一歩も引かないと睨みを利かせていた二人。だが、急にサンジがハッとした様子で真顔に戻り、そしてベンチの端に置かれていたアイスコーヒーを一気に飲み干して、平静さを取り戻した。

「・・・わりぃ、ヘンに意地張ってる場面じゃなかった、」
「あ・・お、おう・・・。」
「つまり、だな。・・・それは七夕のプレゼントだ。」
「七夕のプレゼント?プレゼント贈る、なんて・・七夕にあったか?」

ルフィの中にある七夕の行事ごとと言えば、短冊に自分の願い事を一つ書いて、それを笹に括りつけるというもの。
プレゼントを贈る、なんて風習は聞いたことがなかった。

「この国じゃ、ない。
けどオレが行ってた修行地にも七夕はあって・・、そっちでは最近・・、その・・・」
「・・・・?」
「織姫と牽牛の話にあやかって、その・・・
ば、・・・バレンタインみてぇに、愛し合う者同士がプレゼントを贈りあうっていう流れが、出来てて、・・・な?」

もう一度、な?と、2度問いかけられて・・ルフィはぽかんと口を開いたまま呆けてしまった。
サンジは、一体何を言っているのだろう?言われた内容を再度反芻してみる。

バレンタイン・・?愛し合う者同士?・・・プレゼント?

「お、」
「・・お?」
「おれは、おんなじゃねーぞ??」
「見りゃ分かるわボケェっ!!気色わりぃこと言ってんじゃねぇ!!!」

つーか其処かよ一番にツッコミ入れるのはっ!!とサンジは顔を真っ赤にさせて怒っている。
でも、この赤さは怒りでヒートアップしただけとはとても思えなかった。


つまりは・・・いや、でも・・・そんなことは。
いくらルフィが鈍感だとはいえ、此処まで言われて・・そしてサンジの様子を見ていて、気付かない筈はない。
ルフィはそっと、膝の上の箱へと目線を戻した・・・。

「じゃ、じゃあ・・・これ・・・」
「それが、2年かけて考え抜いた・・・オレからの答えだ、」

不満か?と、ほんの少しむくれた様子で返したサンジをまじまじ見つめた。
本心なのか、それとも偽りなのか。サンジがこの手の嫌がらせをするようなヤツではないことは知っていた。
ただ、見つめれば見つめるほど表情を赤らめていくサンジの姿を見るまでは、とても確証が持てなかったのも事実だった。
ルフィは再び大きく目を瞠って、・・・そして、呆けたように呟いた。

「・・・奇跡だ。七夕の、奇跡だ・・・。」

するとサンジがフンと鼻を鳴らして、照れくさそうにそっぽを向く。

「奇跡でもなんでもねーよ、てめぇが全部仕組んだことだ。
・・・この2年、電話はおろかメールの一つも寄越さねェ。おまえの情報得るのに、それとなくナミさん達から聞いてはひと安心して、・・クソっ、思い出すだけで腹立たしいぜ、一発おもっきり蹴らせろ!」
「えぇぇーーーー!?!」




照りつけた西日はすっかり落ちて。夜空に一際輝く美しい星が、2つ・・・。
年に一度、出会うことを許された彼等もまた、ひと時の再会に酔いしれ、逢瀬の時間を紡ぐのだろう。


「・・また直ぐに、離れることになるかもしれねぇけど、」

「想いは、変わらねぇから。」


繋いだ想いは、決して切れはしない。




《2012年 7月7日 七夕》





END



――――――――――――――――――――――――
所用が出来てしまって遅くなったぁぁあ!!
といっても、リアルタイムで待ってたって人はおそらく居ないと思う・・・思うから、きっと大丈夫だ・・うん・・。

ちなみに七夕にプレゼントのくだりは、実際あります。
日本ではなく、中国とかアジアの方ではそういう風習が出来つつあると、wikiで読みました。(

小話なのにちょっと長くなってしまった・・・小説の方にあげ直そうかな・・。
ではでは、即席七夕小説でした!

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織姫も空を渡る。 2





口に銜えたままのアイスが熱気で溶け、顎を伝って首筋を流れていく。対応が遅かったため伝い落ちたアイスはTシャツの中にまで侵入していった。かるく拭ってみたもののべたべたと残る不快感がどうにも気になって、ルフィは渋々立ち上がった。

一呑みにアイスを食べ終え、棒をゴミ箱の中へと投げ入れてからルフィはTシャツを一気に脱ぎ捨てる。
アイスの染みを残した若干汗臭いTシャツを放り投げて、新しい服を取り出そうとタンスに手を伸ばしたその瞬間、窓の外からひゅんと白い塊が飛び込んできた。

目線を白い物体に移すと、それはぐしゃぐしゃに丸められたルーズリーフで。
ルフィはそれを拾い上げ、窓の外に目を向けた。この辺りは住宅街になっていて、前の道は車の往来の少ない細い道路が続いている。気配を探った先に人影は見当たらないが、この道は小学生の通学路にもなっているので、どこかの悪ガキが悪戯していったのかもしれない。

ルフィは振り返り、アイスの棒が底で転がるゴミ箱へと投げ捨てようと構えた。しかしその時、振り上げた手に一際強い西日が差して、くしゃくしゃに丸かったルーズリーフがうっすらと透けそこに文字が書かれている事に気付き、なんだか興味を引かれて振り上げた手をゆっくりと元に戻した。
しわしわのルーズリーフを拡げて、中の文字に目を通した瞬間、ルフィはおおきく目を瞠った。


“近くの公園で待ってる”

一言だけ、簡潔にそう書かれたルーズリーフ。
ルフィはタンスから適当なTシャツを引っ張り出し、脱兎の如く部屋を飛び出した。
中途半端に履いた靴のかかとに新たな折り目が深々と刻まれる中ルフィは全力で走った。頭の中に浮かぶ疑問を何度も何度も繰り返しながら・・・。

(なんで?)
(どうして今日なんだ?)
(まだ夏休みになってねぇぞ?)
(花火大会は8月前だし)
(夏祭りはやっと準備が始まったってとこなのに)
(なんで・・?)



そこは、住宅街に作られたちっぽけな公園。
ベンチが1つ、砂場とブランコだけが無造作に設置され、木陰になるような木はおろか、夏場には欠かせない水のみ場も存在しない公園と呼ぶには余りにも貧相なその場所は、普段から閑散としていた。
今日に至っては夕方になった今でも真夏日かと思える強烈な日差しが差している。そんな場所に、好き好んで居る人などいるはずもない・・・。

・・・はず、なのに。

曲がり角をまがってすぐ。
公園の入り口前へと立ったルフィの目線の先に、懐かしい金色の髪をみて、一瞬涙が溢れ出そうになった。
そいつは後ろの気配に気付き、くるりと踵を返しその目にルフィを捉えると、ふっと口角をあげてわずかに目を細めた。

「あんま、変わってねェみてぇだな。背は、・・・まちったァ伸びた方、か。」
「サンジ、・・・なんで、おまえ」

筆跡をみた瞬間、サンジだって気付いてた。けど、実際姿を見るまで半信半疑だった。
だってまずサンジのことならナミかロビンに連絡が行くはずだから。
おれやウソップやゾロなんかは、後回しだったから。

まるで幽霊にでも遭遇したかのような、ルフィの呆けきった顔にサンジは軽く肩を竦めてみせてから手持ちの荷物をその場に置いて、ルフィへと歩み寄った。
今置いた荷物と、ベンチに立て掛けられるように置かれたボストンバック。見るからにたった今戻ってきましたといわんばかりの様子にルフィは戸惑うばかりだ。
目の前までやってきたサンジは穴が開くほど自分を見つめるルフィの眉間に素早く指を突き立てる。
イテッと小さく声をあげたルフィに、サンジは眉を寄せた。

「夢見てるような面してんじゃねーよ、」
「お、おぉ。・・・サンジ、帰ってたんだな。」
「帰ってただァー?あの荷物見ただろ?帰ってたんじゃなく、今帰ったんだよ。
・・・ほら、2年ぶりのオレに対して、ほかにいうコトねぇのか?」
「あ・・・お、かえり、サンジ。」
「そ。それだよ、・・ただいまルフィ。」

ってもまだ修行終わったわけじゃねェけどな、とサンジは困ったように笑い返した。
途中で飲み物買ってきた、おまえの分もあるからコッチへ来いと、腕を引かれるままサンジの後に続いた。
黙ってついていくルフィだったが先ほどから脳内は混乱しっぱなしだ。サンジがたった今帰ってきて、目の前に居るって所までは理解した。けど余りにも急過ぎた再会劇にどう対処していいものか、考えが纏まらないのだ。
連れて来られたのは荷物が置かれたベンチの傍。でっかいボストンバックから一本のペットボトルを出して、ルフィに差し出した。ボトルの中には、いくつもの気泡がたっており、ボトル全体は多少汗をかいているがまだひんやりと冷えているようだ。

「おまえは炭酸入ってりゃ何でもで良かったよな?それともこの2年で飲み物の好み変わったか?」
「・・い、いや・・変わってねぇけど。あんがと・・」

コッチはあちぃなぁ・・、そういうとサンジは手で自身を扇ぎながらベンチに腰掛け、自分用に買ったらしいアイス缶コーヒーをカチリとあけ口をつけた。
喉を潤すことで一息ついたサンジは、未だ手渡されたペットボトルを手に棒立ちのままのルフィを訝しげに見つめた。

「・・・、ん・・?飲まないのか?」
「あ、うん・・・飲むけど、・・・その。」

なんというか・・余りにもいつも通りというか。
いや、2年間会わなかったからいつもという言い方はオカシイかもしれない。

けど、

(それにしたって普通すぎる・・・。これじゃ、まるで昨日あったみてぇな雰囲気だ・・・。)
(・・あ。)

(もしかして・・・なかったことに、なってるのか?)
(それとも、忘れられちまったかな・・?)

もしそうだとしたら、ちょっとだけ傷つくけれど・・。
でも考えてみれば、サンジはこれまで料理人になりてぇって夢を叶えるため、学業から離れてまで料理の修行に明け暮れてたんだ。


(・・おれのこと考えてる余裕なんて、なかったかもしんねーよな、・・)


「・・・ルフィ?」
「・・あ、いや!なんでもねぇっ!サンキュなサンジ、早速飲むぞ!ちょうど喉渇いてたんだっ」

何でもない風を装って、ルフィはサンジの横に腰掛けた。
キャップを捻ると中からシュワーっと炭酸の抜ける音がして、さっそくルフィは喉の渇きを潤す。
カッと喉の奥が刺激され、夏の日差しにジリジリと熱った身体がほんの少し冷えるような気がした。
一気に半分を飲み干したルフィに、サンジはゲップ出るぞ?とからかい気味に忠告してから、再びボストンバックの中に手を突っ込む。手の平におさまるほどの小さなケースを取り出したサンジは、そのケースをルフィの膝の上へぽんと乗せた。ルフィはペットボトルから口を放し、ケースに目を向けた。

「ん・・・?」
「土産。食い物じゃなくて残念がるかもしんねーけど、」
「・・土産買ってきてくれたのか?ナミとかロビンとか、女にだけしか買ってこねぇ!!って、空港で言ってなかったか?」
「へッ!?・・なんでおまえはそういう余計なコトばっかしっかり覚えてんだ・・。」

聴こえるか聴こえないかの声量でボソリと答えたサンジは、ルフィが聞き返す前にいいから箱開けろ!と声を荒げた。
ビクビクしながらもおそるおそる上蓋を持ち上げると、其処にはしっかりと包装の施されたちいさな小瓶が入っていた。
中から取り出して包装を解いてみるとそれはただの小瓶ではなく、真っ青な液体が少量入っておりその水面を小さな船が一船ぷかぷかと踊っていた。やしの木の生えた小粒の無人島も一緒に浮かんでいる。
ルフィは目を輝かせた。

「なんだこれっ、こんなちっせぇのに船かっけぇ!!!船首になんかくっ付いてんぞ!?ひまわりかぁっ!?!!」
「どうみたってライオンだろうがっ!!」

赤ちゃんの拳程度の小瓶を両手でしっかと支え下から見つめたり上から眺めたりしているルフィに、サンジは満足げに笑みを浮かべた。新しいおもちゃを手にした小さな子供のような反応も、サンジは予想していたのだろう。くつくつと喉を震わせはじめたサンジに、ルフィはムッと口を窄ませた。
不機嫌そのままを露わにしたルフィに、まぁまぁとサンジは軽く宥めてから、もう一度小瓶にルフィの意識をむかせた。

「ちいせぇけど、一応ボトルシップな・・?おまえ、海とか船とか好きだって、前言ってたろ?」
「おお、すっげぇ好きだっ!なんたって将来の夢は海賊だからなっ!!」
「あー、そうかい。んじゃその夢が叶うまではそいつで船乗ってる気分味わっとけ。本当になられてもそれはそれで問題だしな・・・」

そういうとサンジは小瓶をルフィから取り上げ、プレゼントしたばかりの綺麗な状態に戻し、再度ルフィにその箱を手渡した。幾ら見てても飽きないのだが、落として壊さないようにというサンジなりの配慮なんだろうと思い、ルフィはそれに素直に従った。
貰った箱を膝の上に乗せて、ルフィは上機嫌で空を見上げた。足をルンルンと振って、何気なくルフィは口を開いた。

「おれがこんなイイもん貰っちまったってことは、サンジのことだ。
ナミやロビンにはもっとすんげぇモン買ってきたんだろうな~!うん万円するような服とか、香水とか、アクセサリーとかか!?」
「・・っ、・・・・」

そりゃ当たり前だ!と、すぐに食いついてくるかとおもいきや、サンジの反応は予想外のものだった。
ルフィの言葉に突如押し黙ってしまったサンジ。一向に返事がこないのが気になって隣に振り向けば、サンジはボストンバックのチャックを閉めようとしていた所だったのだろう。その体勢のまま、ピタリと静止していた。





Next.…

――――――――――――――――――――――――
2ページで済ませようと思ったけど長くなったので3ページに持ち越します。


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織姫も空を渡る。 1






ギラギラと照りつける西日差し込む部屋で、溶けかけのアイスを銜えたルフィ。
壁にぶら下げられたカレンダーをじっと睨みつけては、物言いたげな表情を浮かべてぼんやりと天井を見上げたのだった・・・。


想い人が夢を叶えるため海の向こうの、遠い国にいる祖父の下へ修行に出たのが大体一昨年の今頃だっただろうか。
『ナミさんやロビンちゃんに悪い虫がつかねェよう、しっかりお守りするんだぞ!』
別れを惜しむよりも、友人(女性に限る)の身の心配ばかりする彼に相変わらずだな、正月ぐらいは戻ってこいよな!と口々に簡単な挨拶を済ませる仲間達の一歩後ろで、おれはその様子をただ呆然と見ているだけだった。
彼の乗る飛行機の搭乗アナウンスが流れて。ボストンバックを肩に下げた彼は、最後の最後まで女性陣ばかり気に掛け、その他の野郎共には素っ気無く別れを告げ、くるりと踵を返しこちらを一度も振り返ることなくあっさり旅立っていった。

どんどん、どんどん。その背が小さくなって・・・完全に姿が見えなくなる瞬間まで、
おれはずっと、見ていることしか出来なかった。



(きょねんは、・・そう。 たいふうが、きてたんだっけ・・?)

―― 去年の今頃。
結局その年の正月には戻って来られなかった彼から夏には戻れそうだ、と連絡が入ったとナミから聴いた。
楽しみだなぁと口々に言って笑い合う友人達の横で、おれはまた複雑な気持ちになった。

―― 会いたいようで、会いたくなくて。
心の準備が整わないまま迎えた彼の帰省日前日。
暴風と雷雨を伴う大型の台風が上陸し、全域が大嵐に見舞われた。もちろんそんな天候の最中、飛行機が正常に運航する筈はなく彼の帰省も見送りとなってしまい、帰ってきたら皆で行く予定だった花火大会や町主催の夏祭りからすべて、嵐と共に消え去っていった。

―― 修行者の身というのは、なかなかに不自由らしく融通が利かないようで。
今年の正月も結局帰ってこなかった彼に、今年の夏こそは戻って来い!!と、鬼の形相をしたオレンジ色の髪の女性に電話口で怒鳴られ、今年の夏こそは何があろうと戻ってくると彼女に誓いを立てていたと、その場に同席していたらしい長鼻の友人から聞かされた。


具体的な日にちは決まってない。ただ大雑把で、


―― 『夏』になったら戻ってくる。



(じりじり、・・・じりじり・・・あちィ・・・)


ルフィは再び目線をカレンダーに向けた。
白地に黒の印字が施された、新聞屋からのもらい物の質素なカレンダーに一際映える赤色の丸印。
日付部分を囲うように記されたその赤いマークは、今月の後半になればなるほど数が多くなっていく。
つまりは、海の日以降・・・。
夏休みに入ってからの、夏のイベントがある全ての日に、マーカーが施されているのだ。


(あかい、まるが・・・ちかづくにつれて・・・、)


―― おそらく帰ってくるんだろう、・・・アイツが。


(・・・このまま、・・とけねぇかなぁ・・・、)


―― このキモチと、一緒に・・・。





“サンジが好きだ”

旅立つ前の前日に呼び出して唐突にそう告げると、何の冗談だよ、と笑われて。

“ウソじゃねェ、本気だ”

その言葉にサンジの顔は固まった。

“おまえが遠くに行っちまう前に、言っときたかった”

そういうとサンジの表情は歪んだ。そんとき、あ・・やっぱメイワクだったんかな?ってちょっと思った。

“今度帰ってくるまでに考えといてくれ、”

みるみるうちに難しい顔になっていくサンジ。自分がそうさせたとはいえ、みてらんなかった。



(なんで、・・あんなこと、・・いっちまったんだろう・・)
(むりだ、っていわれるのがイヤで、・・むだに、さきのばしにした・・・)


(あいたいな、さんじ・・)
(・・・あいたくねぇよ・・・さんじィ・・・)


空港で別れるとき、あいつは一度もおれを見なかった。
もうそれが“答え”なんだろうと、頭ン中では結論がついていて。
それでもサンジを諦めきれない自分が悪あがきをして、ずるずる、ずるずると今日までみっともなく引き摺ってきた。


―― いい加減、終止符を打って欲しい。


(・・早く、夏・・終わらねェ、かな・・・?)





Next.…

――――――――――――――――――――――――
続きは今書いてます。(!?
とりあえず今日中には書き終えますー。
誤字誤脱誤植は許してねん♪

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小話:『似てなくたって、』 [ep.3] -通学編-

※先に言っておきます。自転車の二人乗りは違反行為です。
  あくまで小説でのお話ですので、絶対にマネしないようにっ!




「サンジー、早くしねぇと遅刻すんぞー?」
「・・・おまえがカバン忘れてなきゃ遅くもならなかったって…」

玄関の施錠を終えたサンジは、門の前で自転車を跨いだ体勢のままコッチを見ているルフィの目の前にほら、と2つの通学カバンを突き出した。
おおサンキュー、と差し出されたカバンを受け取り、自転車のカゴへと無造作に乗せる。
其処には既に弁当箱という名の先客がいるというのに、ぽんとはき捨てるように置かれた通学カバンを一瞥して、サンジははぁと深く溜め息を零しながら、ルフィの背後へとまわった。

「足りないモンあってもオレは知らねーからな」
「にしし、心配ねーさっ」
「その根拠は?」
「ん、サンジだから、」
「・・・・・、・・・そーかい。」

一間置いて、サンジは鼻の頭をぽりぽりと掻きながら呟くように返した。
ちょっぴり耳が赤くなっていることに誰も気付かない。・・・それは当の本人であるサンジですら。


―― ・・・・時間は少々遡る。


『学校に何しにいくつもりだテメェは!!』という激しい罵声と絶妙な蹴りを頂戴して木目の美しいフローリングの床へと突っ伏したままのルフィの首根っこを掴んだサンジ。
ルフィを階段前まで引っ張っていき、『さっさとカバン取って来い!』と言って力の限りおもいきり投げ捨てた。階段の2段目にしたたかに顔面を打ちつけたルフィが いてぇ!と悲鳴をあげて仰向けに転がった。

『サンジ、おれそろそろ本気で怒るぞっ・・・ちょっとは“でりけーす”に扱え!』
『“デリケート”な。つーかそういうタマかよ、おめぇは・・・。』

顔面を擦りながら起きあがるルフィ。指と指の間から、赤くなった鼻先や額が覗く。サンジはやりすぎたか・・・と少々の罪悪感を覚えて、そろそろと手を差し述べた。
ルフィは差し出された掌と、サンジの顔を交互にじろじろと睨みつける。また何かされるんじゃないかと警戒されているのだろう。

『これ以上蹴ったりしねーからそう警戒すんなよ、それより早くしねーとオレもおまえも遅刻だ。』
『・・・サンジは口より先に脚と手が飛んでくっから油断できねー・・』
『・・・・・はぁ、』

しまったな・・朝から少々やりすぎたらしい。珍しく根に持ってやがる。

(普段はどんなに蹴り倒しても滅多に怒らねーんだが・・つーか元はといえばルフィ自身の所為だからオレに咎はねぇんだけど、・・・・あれか。顔面に入ったのが不味かったか・・・。)

このまま尾を引いて、ギスギスした状態で学校にいくのは不本意だった。
ただでさえ別教室。時間が経てば経つほど、関係の修復は難しくなっていくのは目に見えていた。

(オレもルフィも、相当な頑固者だからな・・・、)

―― 自分の考えは絶対、死んでも曲げない。
そういう部分は、まさしく双子と云わざるを得ない。

(・・・しゃーねぇ。)

両頬を大袈裟なほどに膨らませたルフィは、未だサンジを下から睨みあげていた。
ルフィに差し述べた手を一度引っ込め、うなじ辺りを一掻きしたサンジ。そして、

『・・・そこ、退け。』
『むっ・・なんだよ、カバンとって来いって言ってたヤツが退けとかっ!』

口を尖らせ、ブーと下品な音をたてて膨らんでいた頬から空気が抜けた。
そんなルフィを一度見下ろしてから、サンジは一歩足を前に出した。途端、ルフィが立ち上がって防御の姿勢で構えた。

『なんだよ、やんのかっ!?』
『・・・・・やんねーよ。』

明らかな敵対行動に、サンジはちょっぴり不機嫌になった。
どんなにバカで、アホで、どうしようもないクソザルな兄貴であったとしても、サンジはそんな手間のかかるお兄ちゃんが嫌いじゃないのだ。・・・もしも、2択でせまられたら、躊躇いなく好きと答えるだろう。
そんなルフィに、突き放されるような態度を取られてはサンジだっていい気分ではない。
サンジはズボンのポケットに手を突っ込んで、素早く何かを取り出すと小さなその物体をルフィに軽く投げた。
持ち前の反射神経が生きて、突然投げられたそれを落とすことなくキャッチしてみせたルフィは、手の平を開いて中身を確認して小首を傾げた。

『・・・自転車のカギ?』
『先に外でて準備しとけよ、』

そういってルフィを少し押しのけ、2階へとあがっていこうとするサンジ。
驚きで目を瞠ったルフィが振り返る。

『サン』
『ルフィに任せてたらいつまで経っても学校に行けねぇ、・・・』

サンジを呼び止めようとしたルフィの頭をぽんと軽く叩くことで阻止すると、その手で赤く擦れた傷のついた額に軽く触れてから、前を向いて2階へとあがっていく。

『・・・・わる、かった。』

蚊の鳴くような声で呟かれた、小さな謝罪は、しっかりとルフィの耳に届いていて。
ぽかんとその背を追っていたルフィは、よく見ればしゅんと肩を落としているサンジに気がついて、ハッとしたようにその背に向かって声を張った。

『っ、おれもわるかった!サンジ、カバン頼むっ!!』

ピクリと身体を揺らしたサンジが肩越しに背後を振り返ったので、ルフィはにししと笑顔を見せてから弁当を拾い上げて玄関を飛び出していった。ルフィの眩しいぐらいの満面の笑顔が脳裏で何度もループする。

そして、お互い謝る事で仲直りできたんだという喜びがじわじわと沸きあがってきて・・・。

『・・・っし!』

小さくガッツポーズを決めて、サンジは軽快な足取りで2階へとあがっていくのだった。


―*―*―


後輪の軸へと乗り目の前の肩に両手を付くとルフィは片方の足をペダルに置き、地面を軽く蹴った。
普段はお互い一台ずつ自転車を持っているためそれぞれのに乗って学校に向かうのだが、時々・・・そう、今日の朝みたいに険悪なムードから一転して仲直りした後などは、こうして通学することがよくある。
勿論、法に反する行為なので、坂道とか細い道などでは降りるようにしているのだが・・・。

風を切って進む自転車。サ
ンジはルフィのカバンに目をやる。

「・・・しっかしよぉルフィ。前の日に次の日の準備ぐらいしとけよ、中身昨日のまんまだったじゃねぇか」
「ん~~・・・そーだっけか?」
「そーだよ。・・ったく何処にもいねぇぞ?
自分のはともかく、兄貴のクラスの時間割りまで把握しているヤツなんざ・・。」

生徒手帳の裏表紙を一枚めくると、そこには2枚の時間割表が挿んである。
一つは勿論自分のものだが・・・もう一枚はルフィのクラスのものである。

「・・もう少し自己管理してくれよ、ルフィ。」
「ん、まぁ・・・・だいじょぉーーぶっ」


―― おれには、サンジが居てくれるからなっ♪


自転車のベルをチリンチリンと鳴らしながら、後ろをくるっと振り返ってニカッと微笑んだルフィ・・・。
一瞬の間を置いて、目の前の頭を軽く小突いたサンジ。

「・・・前を向け、事故るぞ」
「しし、心配すんな、任せとけ!」
「任せられるかっ、」

むーーーん・・と唸ったルフィは渋々前方へと視線を向けて。
それを確認したサンジはガッと首を折り、視点を真っ直ぐ下向きにして・・・・・そして。


「・・・ヤっ、ベ・・・、ぜってぇコッチ見んなよ・・・クソ兄貴・・、」

と、顔から耳から真っ赤に染めて、ぽつりと呟くのだった。




END

――――――――――――――――――

※二卵性双生児 de ルサンorサンル(どっちでも読めると思うので。

小説では王道の自転車二人乗りシーンですが、実際はやっちゃいけませんからねっ!?!
座れる席があってもダメなので、やっちゃいけませんからねぇぇーーー!!?

しかし、通学編って名のワリには、それっぽいシーンがちょっとしかねぇ・・・不思議だな。
まぁサンジもルフィも、お互い大好きすぎてヤバイんですって雰囲気出したかった。

でも、エチーな関係ではない。・・・いまのところは。(






拍手[2回]

小話:『似てなくたって、』 [ep.2] -登校編-


―― 覚醒した後のルフィは、とにかく五月蠅い。

「サンジ、おかわりっ!!
トーストと、ハムステーキ後3個と、スクランブルエッグベーコン多めで!あ、あとドリンクももうねぇから新しいの」
「自分で取ってこんかぁぁぁいいいっ!!!!!!」

キッチンまで特別特急便だ、と振り上げられた足は見事にルフィの背中にクリーンヒットして、ルフィは目的の場所まで瞬間的に移動することに成功した。
・・・着いた瞬間、ぐったりと床に伸びていたりもするのだが、多少の犠牲ということで流すとしよう。

(あれぐれぇでどうにかなるヤツじゃねぇと分かってるから、できることなんだけどよ・・・。)

「・・・~~っ、いってぇ~・・・サンジひでぇぞ!
毎日毎日、サッカーボールみてぇに容赦なく蹴り飛ばしやがってぇ!!おまえは兄ちゃんをなんだとおもってんだっ」
「あ、わりぃ。出来の悪いサンドバックかと・・」
「バカになったらどうしてくれんだっ!」
「大丈夫だ、それ以上バカになったとしてもそう大差ねぇだろうから」

ズズ・・と、優雅に食後のコーヒーを啜ったサンジに、ルフィは何度もひでぇ、ひどすぎるぞサンジ・・・とぼやきながらもキッチンの前へと立てば・・。
二人分の朝食にしては余っている料理の多さに気付いて、ルフィはサンジの方へと振り返る。
テレビでは“今日の占い”というコーナーが始まり、サンジは興味なさげな様子でぼんやり占い結果を眺めていた。
再びルフィはキッチンへと目をやって、ふっと頬を緩ませたのだ。


「ルフィ、ネクタイ曲がってる。」
「んん、これ結ぶの苦手だ・・・おれがやると絶対ヨレヨレになっちまう・・・」
「もうオレ達2年だぞ?いい加減慣れろよ・・・、ほら、こっち来い。」

嫌味ばかりを並べ立てるサンジだが、言いつつもルフィを引き寄せその首元に手を伸ばす辺り、相当素直じゃないといえる。結び方は、・・・まぁ問題ない。が、ルフィは結ぶときに力任せに引っ張る癖がある。その所為でヨレてしまった部分の生地を指の腹で正しい折り目にしようと圧力をかける。

「こりゃアイロンかけねぇと直らねぇかもな・・・。帰ったらすぐ出せよ?昨日洗ったヤツと一緒に掛けとくから。」
「おぉ!・・・んじゃ、今日一緒に帰えるか?」
「い・や・だ。別に一緒に帰る必要はねぇだろうがっ!」
「むー・・・一緒のほうが絶対楽しいのになぁ~」

口を尖らせてみせたルフィに、サンジはハァと大袈裟に溜め息をついてから、ぼそっと呟いた。

「・・・おまえと帰ると、失費がひでぇことになるからヤなんだよ。」
「あ、サンジ!おめぇまたおれの悪口いっただろっ!聴こえてねぇけど聴こえたぞっ!!」
「なんだよ、それ。」

ブーブーと膨れっ面で暴れだしたルフィの背を「ほら、学校行くぞ、」と宥めるように叩けば、ルフィはすぐさま怒りを引っ込めてサンジの言うとおりに従ってくれる。
この切り替えの良さだけは、称賛に値するかもしれないとサンジは日頃から思う。
感情豊かなルフィと違って、サンジはポーカーフェイスを気取ってあまり感情を前へ出そうとはしない。
自分の思ったままに感情を露わにしてみせるルフィを、サンジは少し羨ましく思っていた。

(ルフィみたいに、好きなものを“好き”だと、ハッキリ言えれば・・どれだけ、)

―― 救われるのだろう、と。

欲しいものがあっても、“欲しい”と素直に言えない子供だった。
そんなサンジを気遣って、いつも代弁してくれていたのが、兄のルフィだった。
双子なのか、どうかは分からない。が、ルフィはサンジの隠そうとする気持ちや想いを敏感に察知してくれる。

自分よりも、幾分か小さめなルフィの背中。

(オレは、いつだってこの背を追ってるんだ・・。これからも、ずっと・・)

玄関前に到着した二人は、くるりと方向を変えてお互い向かいあって目線を合わせた

「よし、じゃあ最終チェックな。」
「おう!」

二人は指を互いの身体に向けてビシッと指差した。

「制服、OK。」
「ネクタイもOKだなっ」
「当たり前だ、さっき直したばっかだろっ!」
「しし、それもそーだ。弁当、OKだぞ」

先ほど朝食を食ったばかりだというのに、もう弁当に食いつきをみせるルフィ。
幾らなんでも底無しすぎんだろう・・・と、サンジは心の中で呟きつつも、さてそろそろ雲行きが怪しくなってくるぞ、とルフィのズボンに向かって指を差した。

「ハンカチ。」
「・・・・・カバンの中?」
「ポケティ」
「・・・・・・・・それも、カバンの中、・・・かも。」

「・・・・・・・・。」

ズボンのポケットの中を確認しながら戻ってきた曖昧な返答に、サンジの苛立ちは徐々に上昇していった。
なにも、完璧なものを求めているわけではない。そこまで几帳面でなければならないというわけでは、決してない。
端からルフィにそんなものを求めた所で、裏切られるのは目に見えているのだから。


ただ、ただ・・・な?

サンジは、視点を下げたときに気付いたルフィの重大な欠陥を指摘するべく、足元に向けて重い指先を指し示した。




「じゃあよ・・・カバン、何処にあんだよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。」




もう朝だけで4回目だぜ・・・
勘弁してくれよ、兄(?)さん・・・・・。




END

――――――――――――――――――

※二卵性双生児 de ルサンorサンル(どっちでも読めると思うので。

結構1時間で書けるものだなぁと、スラスラ続きを書いてみた。

予定では登校する直前ぐらいまでは練ってたんだけど、予想以上に長くなりそうだったので一度区切りを入れてみた。


結果:もう少しだけ、続くんじゃ。


や、まぁ・・拍手とか貰えるなら全然続けていきますけどもね?w(絶賛物欲モード中






拍手[2回]

小話:『似てなくたって、』 [ep.1] -起床編-


―― サンジの朝は早い。


日が昇るか昇らないかの時刻に目覚め、簡単な身支度を済ませると、自室から1Fにあるキッチンへと向かう。
冷蔵庫の中身をチェックし、朝食と昼食の弁当分に必要な材料をテーブルの上に出した後、彼は洗面台へと向かって顔を洗ったり歯を磨いたりする。

泡を纏った歯ブラシを銜えたまま、ドライヤーを使い寝癖のついた髪をブラシで梳かしている間、
彼はこの後用意しなければならない朝食の献立について頭を悩ませるのだ。

(ピザトーストでもいいけど、そんだけじゃ足りないってごねるだろうし・・・
ハムのステーキと、ベーコン入りのスクランブルエッグも添えるか。弁当の方は・・・まぁ肉突っ込んでおけば文句はねぇはずだ。)

この習慣にも随分慣れたもので、洗面台から戻ったサンジはダイニングにある椅子の背もたれに掛けっぱなしにしていたピンク色のエプロンに身を包む。
料理人顔負けの手際の良さで、バラバラだった食材達が一つになり、テーブルの上はあっという間に食欲をそそる彩りある料理の数々で溢れかえった。
朝食用の食器とは別に、横に重ねておいた二つ分の弁当箱を取り出したサンジは、小分けしていた皿の料理を次々弁当箱の中へと詰め込んでいく。見栄えにも拘る彼は、豆の一粒でもずれ落ちないように、菜箸を起用に使って慎重に並べていく。

「・・・よし、これで完成。
っても、どうせ弁当開く頃にはぐっちゃぐちゃになってんだろうなぁ・・・。」

全く同じ配置がなされた2つの弁当箱を交互に見つめ、サンジは何かを思い出すかのように小さく笑みを零した。

アイツは繊細なオレとは違って、がさつだ。そして食に対して節操がない。
家を出る前に弁当箱を渡すと十中八九、昼までに中身が空っぽになっている。奇跡的に半分残っていたとしても、ご飯があらぬ所に転がっていたり、漬物がから揚げに隣接して、衣が変色していたりと、そんなことはざらだった。
それ以後、昼までオレが弁当を預かるようにしたのはいいのだが、腹をすかせたアイツの見境の無さといったら・・・
腹が減れば、ヤツは休み時間中だろうが授業中であろうが、容赦なく弁当を奪いに来るのだ。

「・・・本当に血繋がってんのか、疑わしいぜまったく・・・。」

弁当箱も包み終わり朝食も盛り付け終わる頃には、普段見ているニュース番組が始まって、黒髪のスレンダー美人なお天気お姉さんが今日の天気を伝えてくれる。
朝食を並べ終えたサンジは椅子に腰掛け、リモコンで音量を軽くあげながらテレビに釘付けとなる。このお姉さんの天気予報だけは、欠かさず観るようにしているのだ。・・単純に、好みだから。
暫しそのお姉さんに見入っていると、階段の方から物音がしてサンジは首だけで其方に振り返った。

「珍しいな、自分から起きてくるなんて」
「ふぁ・・・ぁ、・・・はぁお、はんじぃ~・・・」
「ハイハイ、おはようさん。顔洗ってシャキっとしてこい、」

大口を開いて欠伸を零すルフィ。
ずれ落ちかけたパジャマのズボンがどうにも気になったが、寝ぼけているルフィ相手にまともな対応をするのは時間の無駄と知れているので、サンジは軽くあしらって再びテレビの画面に目を向けた。
ずるずると、布を引き摺るような衣擦れの音を鳴らしつつ、てっきり洗面台の方へと向かったと思っていた相手は、いつのまにかサンジの真後ろに擦り寄っていて。

「はぁぉ、はんひ~・・・朝メシ、くいたい」
「のわっ!?!・・・ったく!メシ食いたかったらまずその寝ぼけきった頭をどうにかしてこいって言っただろ!?」
「んんぅ~~・・はんじは、きょうも、いーにほいが、するぅ・・・」
「バッ、!?寝ぼけんのも大概にしろっ首筋に吸い付くなっ!」

首筋を這った生暖かい感触にサンジは飛び上がる。
ちゅぅー、と弱く吸い付かれた首筋に、ヘンな痕が残っていないかと心配になったサンジは食器棚のガラス部分に吸い付かれた首筋を映して確認しようとするも、鏡とはちがい反射性の薄いガラスではどうなっているのかはっきり確認が出来ない。
内心焦りながら指でその部分を触っていると、袖口のあたりにかすかな引きを感じて振り返れば。

「はんじぃ・・」

ぼんやりとサンジを見上げたルフィの真っ黒な瞳とぶつかって、ドキリと胸を高鳴らせた。
早くメシが食べたいと甘えてくるようなその仕草は、到底自分の『兄』とは思えないわけで。

(つっても、数時間出てくんのが早かっただけ、なんだけどよ・・・)

「・・・~~っ、分かった!
オレも誰かさんの所為で洗面所に用事出来たから連れてってやる、だからメシはもう少しガマンしろ!」
「むぅ~・・・はんじのけち」
「ケチで結構。ほら、さっさと凭れ掛かれよ。」
「・・・・・おんぶ?」
「誰がするかぁぁぁっ!!!!」

華麗にヒットした回し蹴りで吹っ飛んでいったルフィ。
廊下とダイニングの仕切り付近で伸びてしまったソイツの脇を持ち上げ、洗面所へ引き摺るように運んだ。

「・・・寝ぼけるとコレだからたまんねーぜ・・・ったく。」

――嫌々といった様子で呟いた彼だった、が。

ほんのり頬を赤らめたサンジに、この後、完全に目を覚ましたルフィにその事をあっけらかんと指摘され、再びご自慢の足技を披露するはめになるのだった。




END

――――――――――――――――――

※二卵性双生児 de ルサンorサンル(どっちでも読めると思うので。

とある方が凄い食いつきをみせてくれたので、軽く小話として書いてみた。
続くかどうかは不明だけどもねwwww

ちなみに設定としては

ルフィ(兄)←2時間程度→サンジ(弟)の、似ても似つかない二卵性双生児。
親御は海外。旦那さん(サンジ似)が単身赴任中で、奥さん(ルフィ似)が寂しさのあまり着いていっちゃった、的な?
子供放置して旦那についていくという奥さんの大胆すぎる奔放さを、間違いなく受け継いでいるルフィに振り回されつつも実はそんな自分が結構好きだったりする苦労人サンジのお話。

恋人とかじゃないけど、お兄ちゃんっ子過ぎて兄弟の情以上のモノをルフィに抱いてる、ってカンジが理想^p^
勿論、ルフィもサンジが可愛くって仕方がない系です^p^うは、文字にしたら予想以上にキモry







拍手[3回]

  

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コメント・拍手いつもありがとうございます!
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